東京高等裁判所 昭和30年(う)64号 判決
被告人 戸松正市
〔抄 録〕
弁護人の論旨について。
原判決は法律の適用として併合罪を加重をするに当り刑法第四十七条第十条により右の加重した刑に同法第十四条の制限内でさらに法定の加重をした刑期の範囲内で……と記載し、原判決の認定判示した五個の詐欺の犯罪事実中孰れを犯情重しとして併合罪の加重をなしたかその犯罪を明示してはいないのであるが、右五個の詐欺の犯罪はいずれも同じような態様のものであるから騙取した物品の価格の高額なもの、すなわち原判示第二の(一)の詐欺の犯罪が最も犯情重しとその判示自体によつて認め得るのである。従つて原判決はこのことを明示しないまでも当然この詐欺の犯罪を犯情重き罪と認め、この罪に対する刑を併合罪の法定加重の基準としたものと解することができるのである。仮に然らずとするも本件はいずれも刑法第二百四十六条第一項に該当する詐欺の犯罪であるから、いずれの罪について併合罪の加重をしても帰するところは結局同一であるわけであるから、この瑕疵は未だ判決に影響を及ぼすことの明らかなものとは到底認められないところである。然らばいずれにするも、本論旨はこれを採用するに由のないものである。